ETCコーポレートカードは「最大40%の割引率」とアピールされることがある。
この表現に嘘はないのだが、より分かりやすく解説すると「ETC2.0車載器を取り付けた事業用車両の高速料金が月3万円を超えた分」が40%の割引率になる。月3万円の高速料金も「ネクスコの高速道路のみ」という制限が付く。
緑ナンバーを取得していない一般車両は最大30%の割引率だ。首都高速や阪神高速の利用分は別計算だし、休日割引や深夜割引を併用した区間があると、割引計算はより複雑化する。
冒頭からネガティブなことを書いているが、3万円に満たない月でも大幅な割引はある。高速道路を頻繁に利用する事業者にとって、ETCコーポレートカードが最も割引率の高いETCカードであることには間違いない。
今回の記事では、ETCコーポレートカードの複雑な大口・多頻度割引を、初心者にも分かりやすく解説しよう。
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引制度
ETCコーポレートカードの割引は「高速道路を沢山利用する事業者の車は優遇するよ」というお得意様向けのサービスだ。大口・多頻度割引制度と呼ばれる。
大口・多頻度割引制度は2種類ある。
一つは、契約した全ての車両で月500万円以上の利用があった場合に発生する契約者単位割引だ。一般的ではない為、今回の記事では説明を省く。
もう一つの「自動車1台ごとの利用額を対象とした車両単位割引」について詳しく解説しよう。
車両単位割引の割引率について
ETCコーポレートカードの車両単位割引は、契約した車によって割引率が異なる。
ネクスコの高速道路は「ETC1.0車載器を搭載した車両」または「自家用車」であれば割引率の最大値は30%となる。国土交通省と縁の深い「ETC2.0を使用する事業用車両」なら40%が最大値だ。
事業用車両とは、荷物や人を運ぶことによって賃金を得る事業者の自動車のこと。ナンバーの色から緑ナンバーと呼ばれる。運送会社の車両、バス、タクシー、霊柩車などが緑ナンバーだ。
そして、自動車1台ごとの1ヶ月の利用額によって割引率が決まる。下記の表を参考にしてみよう。
高速道路の利用額(月) | 割引率 |
---|---|
5,000円未満 | 無し |
5,001円から10,000円まで | 10%(20%) |
10,001円から30,000円まで | 20%(30%) |
30,001円から | 30%(40%) |
白ナンバー車両で月5万円の利用額があった場合、割引額は10,500円で割引率は21%だ。
- 5,001円から10,000円までの利用額で500円割引
- 10,001円から30,000円までの利用額で4,000円割引
- 30,001円から50,000円までの利用額で6,000円割引
ETCコーポレートカードの車両単位割引について、初めての人は特に勘違いするのがこの割引計算。
利用額が月3万円以上あっても、総額から最大値が割引されるわけではないので注意しよう。ランクアップ式ではないのだ。
分かりやすく早見表を作るとこうなる。
月間利用額 | 割引額 | 割引率 | 割引額(事ETC2.0) | 割引率(事ETC2.0) |
---|---|---|---|---|
5,000円 | 0 | 0% | 0 | 0% |
1万円 | 500円 | 5.0% | 1,000円 | 10% |
2万円 | 2,500円 | 12.5% | 4,000円 | 20% |
3万円 | 4,500円 | 15.0% | 7,000円 | 23.3% |
4万円 | 7,500円 | 18.8% | 11,000円 | 27.5% |
5万円 | 10,500円 | 21.0% | 15,000円 | 30.0% |
6万円 | 1,3500円 | 22.5% | 19,000円 | 31.7% |
7万円 | 1,6500円 | 23.6% | 23,000円 | 32.9% |
8万円 | 19,500円 | 24.4% | 27,000円 | 33.8% |
9万円 | 22,500円 | 25.0% | 31,000円 | 34.4% |
10万円 | 25,500円 | 25.5% | 35,000円 | 35.0% |
20万円 | 55,500円 | 27.8% | 75,000円 | 37.5% |
30万円 | 85,500円 | 28.5% | 115,000円 | 38.3% |
40万円 | 115,500円 | 28.9% | 155,000円 | 38.8% |
50万円 | 145,500円 | 29.1% | 195,000円 | 39.0% |
100万円 | 295,500円 | 29.5% | 395,000円 | 39.5% |
ETCコーポレートカードの「最大40%の割引率」をご理解いただけただろうか?
これはあくまでネクスコの高速道路のみを対象とした時の割引計算だ。ネクスコ以外の高速道路を利用した場合は、それぞれ別で計算される。
その他の道路の車両単位割引
ネクスコが管轄する高速道路は、東・中・西の三社を合わせると全国区だ。
しかし、首都高は首都高速道路株式会社、阪神高速は阪神高速道路株式会社が管理している。
これらの高速道路や有料道路もETCコーポレートカードの割引きには対応しているが、割引率はネクスコと異なるので注意が必要だ。
首都高速/阪神高速の利用額(月) | 割引率 |
---|---|
5,000円未満 | 無し |
5,001円から10,000円 | 10% |
10,001円から30,000円 | 15% |
30,001円~ | 25% |
この他にも、福岡の都市高速(福岡北九州高速道路公社)や名古屋高速(名古屋高速道路公社)など独自の割引率を設定している道路がいくつもある。(参照:ETCコーポレートカード割引対象道路と割引率)
併用できるETC割引サービス
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引制度は、併用できるETC割引サービスがある。「休日割引」と「深夜割引」だ。
休日割引または深夜割引を適用した金額が利用額となり、その利用額に対して車両単位割引を行う。
休日割引と深夜割引の割引条件が被った場合は、割引率が最も高くなる割引が適用される。
ちなみに平日朝夕割引は大口・多頻度割引と併用できない。覚えておこう。
具体的にETCコーポレートカードの割引計算をしてみる
実際にいくつかのパターンでETCコーポレートカードの割引計算をしてみよう。ここでは、利用者が多い自家用車(最大30%)で計算をする。
ネクスコだけを月5万円利用した時の割引計算
ネクスコの高速道路だけを利用した割引計算は比較的単純だ。1ヵ月で5万円利用した時の明細は次表のようになる。
利用額 | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|
5,000円未満 | 0 | 0円 |
5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
30,001円~50,000円 | 30% | 6,000円 |
割引額 | 10,500円 | |
支払い総額(21%割引) | 39,500円 |
休日割引や深夜割引を利用したのであれば、それぞれの割引適用後の金額を利用額とする。
1万円分が深夜割引の対象だった場合は「1万円×30%=3,000円」が深夜割引となり、47,000を利用額として計算する。
利用額(深夜割引適用後) | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|
5,000円未満 | 0 | 0円 |
5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
30,001円~47,000円 | 30% | 5,100円 |
割引額 | 12,600円 | |
支払い総額(25.2%割引) | 37,400円 |
休日割引や深夜割引はうまく活用したいところだ。
現実的ではないのだが、5万円全て併用した場合は、35,000円が利用額になる。支払い総額は29,000円、割引率は驚異の42%だ。
ネクスコと首都高速や阪神高速を利用した割引計算
首都高速や阪神高速でもETCコーポレートカードを利用できる。しかし、大口・多頻度割引は別計算される上に割引率が低い。
1ヵ月で高速道路を5万円分利用したが、半分の25,000円は首都高速を走行したケースを計算してみよう。
ネクスコの利用額 | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|
5,000円未満 | 0 | 0円 |
5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
10,001円から25,000円 | 20% | 3,000円 |
割引額 | 3,500円 | |
支払い額(14%割引) | 21,500円 |
首都高速の利用額 | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|
5,000円未満 | 0 | 0円 |
5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
10,001円から30,000円 | 20% | 3,000円 |
割引額 | 3,500円 | |
支払い額(14%割引) | 21,500円 |
利用額が3万円未満の場合は、ネクスコと首都高速の車両単位割引は同じ割引率だ。両者を加算すると支払い総額は43,000円、割引率は14%になる。
ETCコーポレートカードの割引率と割引計算まとめ
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引は最大40%の割引率だ。しかし、単純に総額から40%割引されるわけではない。
利用額によって割引率が設定されており、車両にも条件がある。
高速道路の利用額(月) | 割引率 |
---|---|
5,000円未満 | 無し |
5,001円から10,000円まで | 10%(20%) |
10,001円から30,000円まで | 20%(30%) |
30,001円から | 30%(40%) |
大口・多頻度割引単体では、割引率の最大値に届かない。しかし、休日割引や深夜割引と併用することによって、割引率を底上げすることは可能だ。
正確な割引計算をするには、利用明細の内訳を確認しよう。
- 車の種類(事業用車両か自家用車か)
- 利用額に応じた割引率で計算する
- 休日割引・深夜割引は割引後の金額が利用額になる
- 別の高速道路を利用した場合は別計算
以上の四点を把握していれば、ETCコーポレートカードの割引は計算できる。
ちなみに、ETCコーポレートカードの利用明細書は高速道路ごとに発行される。ネクスコと首都高速を利用した場合は、ネクスコと首都高速から請求書が届く。
ETCコーポレートカードの請求書や利用明細をまとめてくれる事業協同組合が存在する。
組合は「ネクスコの利用が月3万円」「法人か個人事業主」という条件はあるが、面倒な処理を行ってくれる便利な団体だ。
当サイトでは、保証金無しでETCコーポレートカードを発行する「テイ・ネット物流事業協同組合」をおすすめしている。