ETCコーポレートカードは毎月多額な高速料金を支払っている事業者に対し大幅な割引きを適用するETCカードだ。
大口・多頻度割引制度とも呼ばれているETCコーポレートカードの割引率は最大で約30%(ETC2.0の事業用車両は40%)にのぼり、「深夜割引」や「休日割引」との併用も可能である。
そのため上手く活用すると月々の高速代を半額以下に抑えることもできる。さすが高速道路株式会社が発行するお得意様カードであるといえよう。
ただしETCコーポレートカードは「他の車に使えない」「申し込み条件」などの厳しい制限もある。
今回は「ETCコーポレートカードのメリットとデメリット」を分かりやすく解説する。申し込みをするか迷っている人がいたら参考にしてもらいたい。
ETCコーポレートカードのメリットは経費削減
ETCコーポレートカード最大のメリットはズバリ経費削減だ。
一言に経費削減といっても色々あるが一番分かりやすいのが「高速料金の破格な割引き率」である。
法人で申し込みできるETCカードは色々とあるが、その中でもETCコーポレートカードの割引率は比較にならないほど大きい。
もう一つは交通費を管理する「人件費」も削減できる。
特に複数の車を使った運送業、営業車を多く抱えた企業にとって高速料金を管理するだけでも人件費は馬鹿にならない。決算を外注しているならその外注費が該当する。
2つの経費削減についても少し詳しく解説しよう。
メリット①高速料金が大幅割引
ETCコーポレートカードの割引率は少しややこしい。
ネクスコの管轄する高速道路であれば最大30%(ETC2.0の事業用車両は40%)まで割引され、首都高や阪神高速などの都市型高速は割引率がやや低く設定されている。
また「深夜割引」や「休日割引」が併用できる。
- 深夜割引:午前0時~午前4時は30%割引き
- 休日割引:普通車・軽自動車等限定で地方部が30%割引き
「深夜割引」と「休日割引」が重なった場合は料金が安くなる方で計算してくれる実にありがたいサービスだ。
もう少し具体的に説明すると、通常の高速料金から深夜割引を適用し、最後に大口・多頻度を割引という計算方法をする。
高速料金が10,000円だった場合
深夜割引(30%)で3,000円割引
大口・多頻度割引(40%)で2,800円割引
請求金額は4,200円
※実際は上記のように単純な計算式にはならないが条件を満たせば限りなく近い金額になる。
ETCコーポレートカードの割引計算は複雑なため別の記事で詳しく解説している。

メリット②分かりやすい利用明細(組合のみ)
ETCコーポレートカードのもう一つのメリットは利用明細だ。
「いつ、どの車両が、どの高速道路を、いくら使って、いくら割引きされたか」と非常に分かりやすい利用明細が郵送される。
ただし利用明細サービスは「ETC組合」が独自に提供しているもので、組合に参加していない企業は整理されていない利用明細が届くから注意が必要だ。
ETC組合を利用するか、ネクスコで申込みをするかは別の記事で詳しく解説している。

ETCコーポレートカードのデメリット
次にETCコーポレートカードのデメリットを解説しよう。
ETCコーポレートカードは高速道路を管理する「ネクスコ」が発行しており高速代の支払いは後払いとなっている。
そのためクレジットカード会社などが発行する他のETCカードとは違い「審査」や「条件」がある。
その他にある「デメリット」を4つに分けて説明しよう。
- 厳しい申し込み条件
- 違う車で使えない(車両不一致)
- ペナルティによる停止措置
- マイレージサービスに登録できない
デメリット①厳しい申し込み条件
ETCコーポレートカードのデメリットといえば厳しい「申し込み条件」と「審査」が挙げられる。
中でも代表的なのは「申込者と車両が同じ名義である」という点だ。法人で申し込みをする時は同一法人名義の車であることが条件となる。
また高速料金は「後払いシステム」を採用しているため「4ヶ月分の保証金」を納付する他、申し込みから発行まで1ヶ月の期間を要するのもデメリットだ。
なお「4ヶ月分の保証金」はETC組合を利用すれば免除される。
デメリット②別の車で使えない
ETCコーポレートカードのデメリットは「利用方法」にもある。
例えばカードが使える車は「申込時に登録した車両のみ」に限定されている。二台の車で利用するのであればカードを二枚発行する、ということになる。
カードを申し込みする際には必ずETC車載器の「車載器管理番号」が必要になり、カード本体と車載器管理番号が紐づかせてあるのだ。
そのため登録していない別の車で利用しても高速道路の支払いはできるがETCコーポレートカードの「大口・多頻度割引」は適用されない。明細書には「車両不一致」と記載される。
「車両不一致」を繰り返していると「悪意のある利用」とみなされ利用停止などのペナルティを受けるケースも稀にあるようだ。
車検時の代車、レンタカー、カーシェアなど違う車に乗る際には注意しておこう。
デメリット③ペナルティによる停止措置
「悪意のある利用」で利用停止措置のペナルティを実際に受けるケースは稀だがETCコーポレートカードには他のETCカードにはない厳しい制限がる。
一つはETCレーンの通過速度についてだ。
「ETCレーンでは時速20km以下に減速して進入し、徐行して通行する」ことが定められている。
時速20km以上のスピードで通過するとETCが上手く読み込めない可能性があるためだ。
そのバグを悪用し「読み込めない=高速料金がタダになる」と勘違いしたドライバーが勢いよくレーンを通過することがあるが言うまでもなく危険行為だ。
実際の知り合いで利用停止措置を受けた人はいないが、この危険行為を繰り返しているとペナルティ措置を受けるという噂が広がっている。
ちなみにクレジットカード会社が発行する普通のETCカード使用者であっても、故意に開閉バーを破損させたら道路整備特別措置法により罰則金として30万円以下の罰金が科せられることがある。
修理代などを支払わずにいると重いペナルティを受けるので安全運転を心がけたいものだ。
「ETCコーポレートカードのペナルティ措置」として最も注意するべき項目は2017年から厳しくなった過積載の取り締まりだ。
一般車には無縁のことだがトラックなどは積み荷の重さの上限が法律で定められている。車両だけでなく道路にも負担をかけることが理由だ。
過積載の違反点数が一定数を超えるとETCコーポレートカードの利用が停止させられる。最悪のパターンでは違反した車だけでなく契約している全ての車両が停止という非常に重いペナルティもある。
そのためETC組合では過積載の違反は非常に厳しいチェックを行っており違反点数に関わらず発覚後即脱退ということもある。

デメリット④マイレージサービスがない
ETCコーポレートカードは大口・多頻度割引専用だ。その為ETCマイレージサービスに登録することはできない。
どっちのサービスがお得なのかは高速道路の利用状況による。

ちなみにETCコーポレートカードは登録できないが「ETC車載器」は重複しても問題ない。ETCコーポレートで使った車載器管理番号はマイレージサービスでも利用可能だ。
メリットとデメリットのまとめ
以上、ETCコーポレートカードのメリットとデメリットについて説明したが、簡潔にまとめると下記のようになる。
- 大幅な割引率
- 利用明細(組合がおすすめ)
- 厳しい申し込み条件
- 違う車で使えない(車両不一致)
-
ペナルティによる停止措置
-
マイレージサービスに登録できない
正直、「車両管理が面倒臭い」「ETCレーンまで監視されたくない」「荷物を一杯運びたーい」という様なズボラな人間にETCコーポレートカードは向いてない。
大きな恩恵を享受するならば、それなりの対価を支払う必要がある。
それができないのであればクレジット会社などが発行する普通のETCカードで我慢するべきである。
と、大層な言い回しをしたがほとんどの人は問題ない(と願いたい)。
極稀にネクスコから警告という題名のラブレターを貰ったという噂も耳にするが、せっかくなのだから是非”常識のある運転”を心がけてもらいたい。
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