ETCコーポレートカードのウリは「割引率が最大40%」だ。
実際は「深夜割引」「休日割引」を併用することで、計算上では高速料金を50%近くまで割引くことが可能である。
ただし、ETCコーポレートカードの割引計算はやや複雑だ。使い方によっては40%どころか10%にも満たないケースもある。
その理由は、ETCコーポレートカードの割引き率が「段階式割引」を採用しているからだ。
使うほど割引率が上昇し3万円を超えた分の料金が40%割引になる。
月に1万円程度の利用額では10%(場合によっては5%)ほどの割引率だし、5000円未満に至っては一切割引がない。
毎月10万円の利用額があっても、「深夜割引」や「休日割引」を併用しなければ請求額が6万円になる訳でもない。
なんだか狐につままれたような話だ。
ちなみに40%の割引きが適用されるのはETC2.0を使用する事業用車両に限定される。自家用車は最大で30%だ。
狐も裸足で逃げ出す話しである。
予備知識の無い人間に一から説明するとまずここで会話の流れが止まる。何度か問答を重ねてやっとこ理解してくれる。
過大な謳い文句に過度な期待をし「話が違う!」とならないように、ETCコーポレートカードの割引率をおさらいしてみよう。
具体的な数字で割引率を計算をする。完璧に理解した上で申込みをしてもらいたい。
ETCコーポレートカード割引率の種類
ETCコーポレートカードは「ETC2.0を使用する事業用車両」とそれ以外の「自家用車」で割引率が違っている。どちらも”使えば使うほど高くなる割引率”は同じだ。
またどの高速道路を利用したかによっても割引率が違う。
更に休日割引や深夜割引と併用できるため正確な割引計算をするには利用明細が必要になる。
- 車の種類(事業用車両か自家用車か)
- 利用額が高いほど割引率も高くなる
- どの高速道路を利用しているか
- 他の割引サービスとの併用
以上の四点を把握していれば割引計算は難しくない。
事業用車両と自家用車の割引率
事業用車両とは、荷物や人を運ぶことによって賃金を得る事業者の自動車だ。引っ越し専門トラック、バス、タクシーさらには霊柩車なども該当する。
ナンバーの色を見れば一目瞭然だ。緑地に白字のナンバープレート(軽自動車は黒地に黄字)をぶら下げているため「緑ナンバー」とも呼ばれている。
街を走るタクシーを思い浮かべて欲しい。ナンバーは緑色のはずだ。
白いナンバーのままタクシー行為を行う”白タク”の通称はこれに由来する。国の認可を得ずに運送で報酬を得ることは基本的に違法である。
厳しい国の認可を得た緑ナンバーの割引率は40%、それ以外の自家用車(白ナンバー)は30%の割引率ということだ。
ETCコーポレートカードは概ね30%、一部の事業者は40%まで割引きされる。という表現が正しいのかもしれない。
ちなみにETC2.0とは「料金収受システムから運転支援システムへ」と銘打った次世代システムだ。
料金支払いに特化した従来型に対し、ETC2.0では渋滞回避や事故多発地点などを知らせる運転支援サービスを受けられる。

使えば使うほど高くなる割引率
次に請求額た高いほど割引率も高くなる段階式について説明しよう。
ETCコーポレートカードは5,000円を超えた時点から割引きが適用される。敷居は高くないが、その程度では割引率は低い。
10,000円を超えると割引率が上がり、30,000円を超えると最大の割引率を受けることができる。
段階 | 高速料金(月) | 割引率 |
---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 無し |
1 | 5,001円から10,000円まで | 10%(20%) |
2 | 10,001円から30,000円まで | 20%(30%) |
3 | 30,001円から | 30%(40%) |
ETCコーポレートカードの割引率を表にすると上記のようになる。
誤解されがちなのが、月に高速料金が3万円以上あっても全ての利用額が30%の割引ではない。
「5,001円から10,000円まで」の割引率は10%だし、「10,001円から30,000円まで」の割引率は20%だ。
ETCコーポレートカード早見表
計算が苦手な人は早見表で大雑把な割引率がわかる。
月間利用額 | 割引額 | 割引率 | 割引額(事ETC2.0) | 割引率(事ETC2.0) |
---|---|---|---|---|
5,000円 | 0 | 0% | 0 | 0% |
1万円 | 500円 | 5.0% | 1,000円 | 10% |
2万円 | 2,500円 | 12.5% | 4,000円 | 20% |
3万円 | 4,500円 | 15.0% | 7,000円 | 23.3% |
4万円 | 7,500円 | 18.8% | 11,000円 | 27.5% |
5万円 | 10,500円 | 21.0% | 15,000円 | 30.0% |
6万円 | 1,3500円 | 22.5% | 19,000円 | 31.7% |
7万円 | 1,6500円 | 23.6% | 23,000円 | 32.9% |
8万円 | 19,500円 | 24.4% | 27,000円 | 33.8% |
9万円 | 22,500円 | 25.0% | 31,000円 | 34.4% |
10万円 | 25,500円 | 25.5% | 35,000円 | 35.0% |
20万円 | 55,500円 | 27.8% | 75,000円 | 37.5% |
30万円 | 85,500円 | 28.5% | 115,000円 | 38.3% |
40万円 | 115,500円 | 28.9% | 155,000円 | 38.8% |
50万円 | 145,500円 | 29.1% | 195,000円 | 39.0% |
100万円 | 295,500円 | 29.5% | 395,000円 | 39.5% |
3万円以上の利用額が30%割引(ETC2.0の事業車両は40%)で、金額が多いほど割引率は30%に近くなる。
休日割引・深夜割引との併用
嬉しいのは他の時間割サービスと併用ができる点だ。
「休日割引」または「深夜割引」のうち、割引後の料金が最もお安くなる方が適用される。
割引後の料金をETCコーポレートカードの利用額として計算する。
割引が効く道路や車種に違いはあるものの「休日割引」と「深夜割引」は30%の割引がある。
自動で最も安くなるように調整してくれるのは親切この上ない。携帯会社の料金プランも見習って欲しいものだ。
平日朝夕割引は併用できない
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引は他の割引サービスと併用できるが「平日朝夕割引」だけは併用できない。
しかしETCコーポレートカードを持っていれば「平日朝夕割引」を単体サービスとして利用できる。割引率は最大50%でかなりお得だ。
そのため自分で割引率を計算する時は「平日朝夕割引」を別シートで管理する必要がある。少々ややこしい。

道路によって違う割引率
更にややこしいのが日本の高速道路や有料道路は多くの民間企業と道路公社によって管理されている点だ。
ETCコーポレートカードはネクスコが発行している。ネクスコ以外の高速道路は基本的に無関係、別会社の管轄である。
首都高は首都高速道路株式会社、阪神高速は阪神高速道路株式会社が管理している。ネクスコは関与していない。
これらの高速道路や有料道路もETCコーポレートカードの割引きには対応しているが独自の割引率を採用している。
段階 | 首都高速/阪神高速 | 割引率 |
---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 無し |
1 | 5,001円から10,000円 | 10% |
2 | 10,001円から30,000円 | 15% |
3 | 30,001円~ | 20% |
この他にも福岡の都市高速(福岡北九州高速道路公社)や名古屋高速(名古屋高速道路公社)など独自の割引率を設定している道路がいくつもある。詳しくは別の記事を用意した。

実際に計算してみる
実際にいくつかのパターンでETCコーポレートカードの割引計算をしてみる。具体的な数字を見た方が理解も早いだろう。
なお利用者が多い自家用車(最大30%)の方で計算する。
ネクスコで月5万円利用の割引計算
まずはネクスコの管轄する高速道路を月に5万円使った時の計算式だ。
段階 | 高速料金(月) | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 0 | 0円 |
1 | 5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
2 | 10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
3 | 30,001円~50,000円 | 30% | 6,000円 |
割引総額 | 10,500円 | ||
支払額 | 39,500円 |
一番多いのは、上にも書いたが「3万円以上使ったから30%引き」という勘違いだ。5万円が30%(15,000円)割引されて35,000円にはならない。
0段階から2段階まで(3万円以下)の割引額は変わらない。
30%の割引きが適用されるのは3万円からである。総額で5万円を使ったのであれば、3万円~5万円の2万円分が30%割引になる。
支払額は39,500円で10,500円(21%)割引されることになる。
ネクスコで月30万円利用の割引き計算
ETCコーポレートカードの利用者でボリュームゾーンと言われている月30万円分を使った計算式はこうだ。
段階 | 高速料金(月) | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 0 | 0円 |
1 | 5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
2 | 10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
3 | 30,001円~300,000円 | 30% | 81,000円 |
割引総額 | 85,500円 | ||
支払額 | 214,500円 |
支払額は214,500円で割引率は28.4%になる。
ネクスコで月100万円利用の割引き計算
毎月100万円の高速料金を使っている業者は事業用車両を持っているケースも多いが自家用車の30%で計算する。
段階 | 高速料金(月) | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 0 | 0円 |
1 | 5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
2 | 10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
3 | 30,001円~1,000,000円 | 30% | 291,000円 |
割引総額 | 295,500円 | ||
支払額 | 704,500円 |
支払額は704,500円で総額から計算しても29.5%の割引率だ。ほぼ30%と言っても良いだろう。
使えば使うほど割引率が上がるわけである。
他の割引サービスと併用した割引計算
「休日割引」または「深夜割引」と併用できるのがETCコーポレートカードの強みでもある。
どちらも30%の割引率だが休日割引と深夜割引両方の併用はできない。どちらかを割引きした後に大口・多頻度割引を適用する。
ネクスコ30万円を全て休日割引と併用
30万円分の高速料金を全て休日割引の範囲で走行した場合はどうなるのか?まず休日割引(30%)を適用して21万円を総額として計算する。
段階 | 高速料金(月) | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 0 | 0円 |
1 | 5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
2 | 10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
3 | 30,001円~210,000円 | 30% | 54,000円 |
割引総額 | 58,500円 | ||
支払額 | 151,500円 |
休日だけしか乗らないという条件はいささか乱暴ではあるが、割引率は49.5%まで跳ね上がり支払額も151,500円でほぼ半額だ。
30万円のうち15万円を休日割引と併用
半分の15万円分だけ休日割引を適用する場合は255,000円を総額にして計算すれば良い。
300,000−(150,000×30%)=255,000
段階 | 高速料金(月) | 割引率 | 割引額 |
---|---|---|---|
0 | 5,000円未満 | 0 | 0円 |
1 | 5,001円から10,000円 | 10% | 500円 |
2 | 10,001円から30,000円 | 20% | 4,000円 |
3 | 30,001円~255,000円 | 30% | 70,500円 |
割引総額 | 75,000円 | ||
支払額 | 184,500円 |
30万円の高速料金が184,500円まで圧縮されて割引率は38.5%だ。
割引率と割引計算まとめ
ここまでの具体例は全てネクスコ管轄の高速道路を走行した場合の割引計算だ。ネクスコ以外の首都高や阪神高速も使うのであれば別シートで計算する必要がある。
割引率は多少違いがあるものの計算方法はほぼ同じだ。ポイントをまとめると下記のようになる。
- ETC2.0の事業用車両は40%、それ以外の自家用車は30%
- 段階形式の割引率で3万円以上が最大値
- ネクスコ以外の道路は別計算
- 休日・深夜割引サービスと併用できる
ETCコーポレートカードを組合で発行する場合、最低利用3万円という条件がある。3万円の利用でも15%の割引を受けることができるのでETCカードとしては破格の割引率だ。
ETCマイレージサービスはどんなに効率的に使っても9.1%を超えない。
ETCコーポレートカードに興味を持ったのであれば「テイ・ネット組合」をおすすめする。
