高速道路を頻繁に利用している人は「ETCコーポレートカード」を使っていることが多い。
ETCコーポレートカードとは「大口・多頻度割引制度」に対応したETCカードだ。「大口・多頻度割引制度」とは、分かりやすく例えるなら「高速道路を頻繁に利用する人に向けた大幅割引サービス」のことである。
高速道路を管理するネクスコが発行している唯一の「お得意様カード」だ。高速道路を使えば使うほど割引率が上がる仕組みで、毎月の高速代が高い人ほど割引額が大きくなる。
「大口・多頻度」=「高速道路を多く使う」だが、割引自体は高速道路の利用が「月5,000円以上」で適用されるため、運送業以外の業種でも使用している法人は多い。
また「ETCコーポレートカード」の名前のせいで法人用と思われがちだが、保証金を積めば個人でも申し込みが可能だ。
今回の記事は「ETCコーポレートカードとは一体どんなサービスを提供してくれるのか?」を初分かりやすく解説していく。
- 使うほど上がる割引率「大口・多頻度割引」
- 申し込みできる法人・個人・団体とは
- 4ヶ月分の保証金を無くす方法
- 申込みはちょっと手間がかかる
- ETCコーポレートカードはこんな人におすすめ
ETCコーポレートカードとは
ETCコーポレートカードとは、高速道路株式会社(ネクスコ)が管理・発行をしている法人向けのETCカードだ。
後で詳しく解説するが、4ヶ月分の保証金を用意すれば個人でも発行することは可能である。
ETCコーポレートカードは毎月の高速料金が高額になるほど割引率がアップする「大口・多頻度割引制度」に対応している。
「大口・多頻度割引制度」とは、ETC2.0車載器を搭載した事業車両なら最大40%、普通車両(自家用車)なら最大30%まで割引率が上がる割引サービスだ。

出典:ネクスコ
カード本体の見た目は普通のETCカードと違いはない。特別な装置が必要というわけでもなく、申込み時に「車載器管理番号」を登録などが必要だが、現在設置しているETC車載器(ETCカードを挿す装置)をそのまま活用できる。
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引とは
ETCコーポレートカードの最大の特徴は、高速道路を使えば使うほど割引率が高くなる「大口・多頻度制度」だ。
ネクスコが管轄する高速道路では3万円以上の利用分から割引率が30%になる(ETC2.0の事業車両は最大40%)。
高速料金(月) | 割引率 |
---|---|
5,000円未満 | 無し |
5,001円から10,000円の分 | 10%(20%) |
10,001円から30,000円の分 | 20%(30%) |
30,001円以上の分 | 30%(40%) |
ETCコーポレートカードの「大口・多頻度割引制度」は割引計算が特殊なため別の記事で詳しく解説している。

高速料金が月5,000以上から割引されると書いたが、平均13,800円以下の場合は、ETCコーポレートカードではなく、「ETCマイレージ」に登録した従来のETCカードの方が断然お得になるという検証結果も出ている。

その他の割引サービス
ETCコーポレートカードは「大口・多頻度割引」の他にも時間帯などによる割引サービスが付いている。
- 大口・多頻度割引
- 休日割引
- 深夜割引
- 平日朝夕割引(併用不可)
「大口・多頻度割引」と併用できる割引サービスは「休日割引」もしくは「深夜割引」だ。休日や深夜の割引された高速料金から更に「大口・多頻度割引」が適用される。

「休日割引」や「深夜割引」を併用すれば、高速料金が半額になる荒業も可能だが、「平日朝夕割引」は「大口・多頻度割引」と併用できないので注意が必要だ。
併用はできないが、「平日朝夕割引」は単体で最大50%の割引が適用される。ETCコーポレートカードを利用していれば「平日の朝か夕方」が適用される。

ETCコーポレートカードは割引計算が複雑だ。更に「併用できる割引」「併用できない割引」など色々な割引サービスがあるが「一番安い料金」で請求してくれるのは嬉しい。どこぞの携帯会社とは違う良心的なサービスと言って良いだろう。
ETCコーポレートカードのメリットとデメリット
ETCコーポレートカードは日本で一番割引率の高いETCカードだが、申込みは手間がかかる上に発行まで1カ月の期間を要する。使用方法にも制限があるため注意が必要だ。
ETCコーポレートカードのメリットとデメリットに分けて解説しよう。
- 大口・多頻度割引
- 休日割引・深夜割引(併用可)
- 平日朝夕割引(併用不可)
- 申込みに手間がかかる
- 4ヶ月分の保証金が必要(※免除する方法あり)
- 車両1台につき1枚(別の車で使えない)
ETCコーポレートカードのメリットとデメリットは別の記事で細かく解説をしている。

ETCコーポレートカードは別の車には使えない
ETCコーポレートカード最大のデメリット「別の車で使えない」を少しだけ詳しく解説しよう。
ETCコーポレートカードは利用車両を限定することで「大口・多頻度割引」の恩恵を受けることができる。
よって事前に申請した「使用する車両」と「発行したカード」が一致していないと割引ができない。
仮に違う車に差して運転した場合、ETCゲートは開くが「車両不一致」として割引適用外となる。
警告を無視して使用を続けると「カードの悪用」と判断され停止措置を取られる可能性がある。面倒だが明細書をチェックする癖をつけておこう。
申込みには「ETC車載器管理番号」と「車体ナンバー」が必須であり、この管理番号とカードの認証ができて初めて割引が適用される。
3台の車で使いたいのであれば、ETCコーポレートカードを3枚発行する必要がある。
リース車、レンタカー、カーシェア、車検時の代車などでETCコーポレートカードを利用することはできない、ということだ。
ETCコーポレートカードの発行元はネクスコ
ETCコーポレートカードには様々な優待があり、相応の制限が付く理由は発行元がネクスコだからだ。
ネクスコとは高速道路株式会社3社の総称である。
- NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)
- NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)
- NEXCO西日本(西日本高速道路株式会社)
ネクスコが管理している高速道路は基本的に3万円以上30%(ETC2.0の事業車両は40%)の割引率になっている。
ネクスコ以外の高速道路は独自の割引体制だ。ネクスコ以外の高速道路とは、首都高や阪神高速など「都市型高速」などを指す。
都市型高速でも「大口・多頻度割引」に対応しているが、割引率はネクスコ系の高速道路より低く設定している。
ETCコーポレートカードを申し込みをする前に、自分が利用する高速道路をチェックすることを勧める。
ETCコーポレートカードを使うとどの位割引されるのか?利用額や利用する高速道路によって割引率は大きく異なるからだ。

ETCコーポレートカードの申し込みについて
ETCコーポレートカードの申込み手続きは、他のETCカードと比較してかなり手間と時間がかかる。
手続きの準備だけで半日は潰れるし、申込みをしてからカードが届くまで1カ月ほど期間がかかることを覚悟しておこう。
クレジット会社系なら「ETCカードよろしく」の一言、もしくはweb上でワンクリックすれば手続きが終わるが、ETCコーポレートカードはまず揃えなければならない書類が数多くある。
- ETCコーポレートカード利用申込書
- 車検証
- ETC車載器管理番号
- 商業登記簿謄本
- 印鑑証明
- 保証金(組合は不要)
全ての書類を提出してから審査に入る。申込みが完了してカードが発行され実際に利用するまで1ヶ月ほど期間を要する。
申し込みには4ヶ月分の保証金
ネクスコが発行するETCコーポレートカードの割引率はどの業種の優待と比べてもトップレベルだ。
だが後払いシステムを理由に、カードを発行するには「保証金」または「金融機関の保証書」が必要になる。
保証金は利用料金の4ヵ月分、もしくは最低10万円だ。月に1万円の利用でも最低額の10万円、月に20万円の利用があるなら80万円を保証金として納金しなければならない。
この保証金は月々の高速代から引かれるものではなく、万が一支払いが滞った時の担保として預けるもの。高速代は請求額に応じた額を毎月支払わなければならない。また月々の利用額が増えたら追証もある。
保証金はETCコーポレートカードを解約すれば当然返却されるが、使っている限り動かせないお金、要するに「死に金」となることを覚えておこう。
次の項目で「保証金を無し」にする方法を紹介しよう。
ETCコーポレートカード協同組合で保証金無し
4ヶ月分の保証金は「ETCコーポレートカード協同組合」に加入することで無くすことができる。
厳密には「組合の発行するETCコーポレートカード」であれば組合が保証金を肩代わりしてくれる。そのためカードの申し込み前に組合へ加入することが条件だ。

ETCコーポレートカード組合への加入は「法人・個人事業主」に限定されるため事業届を出していない個人は加入できない。
完全な個人名義でETCコーポレートカードを申し込みをするなら保証金が必要なネクスコの窓口を利用するしかない。

また「組合に加入する条件」も幾つかあるが、それらがクリアできるなら組合系のETCコーポレートカードがオススメだ。
- 高速代が毎月3万円以上ある
- 法人・事業団体・個人事業主
- 組合加入金1万円(脱退時に返却)
ETCコーポレートカード組合に加入すると「保証金不要」「明細が整理される」などの組合独自のサービスを受けることができる。
車両と申込者の名義が同じであること
ETCコーポレートカードは車両と申込者の名義が同じであることが申込み条件の一つにある。
法人名義でカードの申込みをするなら、車の名義も同じ法人名義でなければならない。
つまり「リース車」「カーシェア」などの車両ではETCコーポレートカードの申込みはできない、ということになる。
※ローンで車を購入すると完済までディーラーやローン会社の名義になることがあるが、その場合は同一名義でなくてもETCコーポレートカードの申込みは可能だ。
申込みできない・審査に落ちるケース
全ての書類を不備なく提出してもETCコーポレートカードの発行を拒否されるケースがある。
- 過去3年以内に高速道路で料金トラブルがある
- 高速道路で起こした損害(バーを折ったなど)を賠償していない
- 過去3年以内に何らかの理由でETCコーポレートカードを没収されている
- 法人の実態が確認できないペーパーカンパニー
- 保証金または保証人を用意できない
- ETC車載器がない
ETC組合の審査につていは別に記事を設けている。

ETCコーポレートカードとは?まとめ
ここまでETCコーポレートカードについて初心者向けに基本的な概要を解説した。最後にまとめてみよう。
ETCコーポレートカードとは高速道路株式会社が発行する公式のETCカードであり、一言でいうなら「高速道路のお得意様カード」だ。
申込みに必要な書類が多く利用方法にも制限があるが、毎月バカ高い高速代を支払う事業者に対する救済システムでもある。物流系の法人はETCコーポレートカードをほぼ導入している。
月々の高速代が安くてもETCコーポレートカードの申込みはできるが、「13,800円以下」ならETCマイレージサービスの方が得になる。
「13,800円以上」がボーダーラインだが、手続きの手間や利用時の制限を考えると気軽に申請できないのがETCコーポレートカードだ。今後の使用状況なども考慮すると良い。
ETCコーポレートカードは組合が断然おすすめ
ネクスコが管轄する高速道路の利用額が毎月3万円(年36万円)以上の法人または個人事業主はETC組合への加入をおすすめする。
保証金や保証人が不要なうえ、明細整理サービスもある。
まだ申込みしていないなら早急に手続きをした方が良いし、存在を知らない知人がいたら教えてあげよう。感謝されること間違いなしだ。
当ラボでは「テイ・ネット事業組合」をすすめている。

月3万円以下、もしくは個人でETCコーポレートカードを発行するならネクスコの窓口で申し込みすることができる。
4ヶ月分の保証金が必ず必要になるので、それなりの資金を準備しなければならない。
ETCコーポレートカードのよくある質問
最後にETCコーポレートカードについてよく聞かれる質問をFAQ方式で紹介しておこう。
バイクでも申込みできる?
ETCコーポレートカードはバイクでの利用も可能だ。
「申込者とバイクの名義が同じ」「ETC車載器を取り付けている」ことが条件である。もちろんETCコーポレートカード組合の加入も問題ない。
支払い方法を教えて
ネクスコで申込みをしたETCコーポレートカードの支払い方法は毎月銀行振り込みとなっている。
ETCコーポレートカード組合で申込みした場合は口座引き落が多い。組合によって銀行振り込みを指定することもある。
どちらで申し込みをしてもクレジットカードでの支払いは聞いたことがない。
別のETCカードを利用できる?
ETCコーポレートカードは別の車で使えないが、ETCコーポレートカードに登録した車は別のETCカードで使うことはできる。
限度額はある?
後払いシステムのETCコーポレートカードは基本的に限度額はない。
だが保証金を預けている場合は追証があるし、支払いが滞れば利用停止措置でカードが使えなくなる。
手数料はかかるの?
ETCコーポレートカードの各種手数料は629円だ。
- カードの新規発行
- 追加カードの発行
- 紛失破損による再発行
- 毎年4月に取扱手数料(×カードの枚数分)
この「629円」は発行元ネクスコの単価となっており、ETCコーポレートカード組合に加入すると上乗せされるケースもある。
629円そのままの組合もあれば1,000円に設定している組合もある。注意深く確認してから申込みをすると良いだろう。