とあるETCコーポレートカード協同組合の組合員から相談を受けることがある。「どうもETC割引が少ない気がする」とのこと。
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引計算は少々複雑だ。実際に明細書を拝見してみると、組合員の勘違いだったパターンもあるが、組合が意図的に割引額を減らしているケースも少なくない。
組合系のETCコーポレートカードは、割引率を組合が独自に設定していることがある。損害賠償を求めるか否かは規約次第だが、明らかに割引率が低い場合は、早急に組合の変更をすすめている。
今回は記事では、実際に聞いたことのある「ETCコーポレートカード協同組合の低い割引例」や「悪質な誤魔化し方」を紹介する。この手の悪質な組合に加入してしまった場合の組合変更の方法についても解説しよう。
ETCコーポレートカード協同組合の大口・多頻度割引について
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引は2種類ある。一つは毎月の高速代によって割引率が変動する車両単位割引。もう一つは月500万円以上の利用で更に10%を割引りする契約者単位割引だ。
- 車両単位割引…1台当たり最大30%(ETC2.0の事業用車両は40%)
- 契約者単位割引…月総額500万円以上で10%
ネクスコに直接申込みした従来のETCコーポレートカードは、車両単位割引と契約者単位割引の2つが適用される。
組合系のETCコーポレートカードは車両単位割引だけが適用される。車両単位割引はネクスコのETCコーポレートカードと同じ割引率を採用している組合が多い。
契約者単位割引は組合の運営費として徴収される為、高速代が月500万円以上の事業者は組合を利用しない方が割引額が大きくなる。
組合とネクスコの違いについては別記事「ETCコーポレートカード事業協同組合とは?ネクスコよりお得なETC組合」を参考にしてもらいたい。
悪質なETCコーポレートカード協同組合の割引
ETCコーポレートカード協同組合の大口・多頻度割引は、車両単位割引だけが適用される。割引率はネクスコの定めた設定をそのまま採用している組合が多いが、独自の割引率を設定している組合も稀にある。
この独自の割引率が曲者だ。車両単位割引は計算方法が少々ややこしい。細かい計算方式は別記事にまとめているが(ETCコーポレートカードの割引率で具体的に割引計算してみよう)、この複雑な割引計算を逆手にとって、本来受けることのできる割引を誤魔化す組合がある。
- 休日割引・深夜割引を併用しない
- 首都高速や阪神高速を割引しない
- 部分的に割引率を減らす
上記は一例だが、割引を誤魔化す組合は要注意だ。話し合いすらできない状況であればETC組合の変更を推奨する。
悪質なETCコーポレートカード協同組合はどのくらいある?
割引率を誤魔化す悪質なETCコーポレートカード協同組合は存在するが、ヒヤリングする限り数は多くない。むしろ稀だと言える。
事前に説明していたり、賦課金を徴収するようなグレーな組合を除けば、2つ3つ確認できている程度だ。「プチぼった」のように巧みに誤魔化していて組合員が気付いていないだけのパターンもあるだろうが、真っ黒なブラック組合は微粒子レベルで存在している程度だと思って良いだろう。
間違った利用方法では大口・多頻度割引が適用されない
組合員が間違った利用により割引が適用されないパターンも紹介しておこう。
まず多いのは車両不一致だ。登録した車両とは別の車にETCコーポレートカードを差して通行したら大口・多頻度割引が一切適用されない。
この場合は明細書を確認すれば原因はすぐ判明する。長期間「車両不一致」の状態が続くと、所属している組合が教えてくれることもある。ETCコーポレートカードを差しっぱなしにするのはセキュリティ上問題がある。車両とカードはしっかり管理しよう。
また、ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引は、ETC車載器に差して使うことが条件でもある。ETC車載器が故障し、手渡しでゲートをくぐった時は割引対象外だ。
ETCコーポレートカード協同組合が発行する明細書の読み方もよく間違えられる。
例えば「休日割引・深夜割引」は大口・多頻度割引と併用して割引されるが、明細書に書いてある割引前の金額は、休日割引・深夜割引を差し引いた金額が記載される。
ETCコーポレートカードの明細書に記入してある割引前とは、大口・多頻度割引する前の金額となっている。「平日朝夕割引」同様だ。
「休日割引」「深夜割引」「平日朝夕割引」の3つのサービスを利用した際には割引後の金額のため見た目より割引率が低く感じることがある。
ETCコーポレートカード組合の変更方法
次にETCコーポレートカード協同組合の変更方法を解説しよう。
割引率を誤魔化すような悪質な組合にいつまでも加入している意味はない。早急な組合変更を提案したいところだが、注意点もある。
ETCコーポレートカードは、一名義一申込み。組合でETCコーポレートカードを発行している状態では、他の組合でも新規の申込みができない。一度カードを解約し、新たに申込みしなければならない。
解約と新規申込みは時間を要する為、ETCコーポレートカードを利用できない期間が発生してしまうことは念頭に置いておこう。
ETCコーポレートカードが利用できない期間に注意
ETCコーポレートカード協同組合の変更手続き中はETCコーポレートカードが利用できない。
現在使用しているETCコーポレートカードを解約するには、解約申請とカード返却の他に、利用料を清算しなければならない。支払日が翌々月だったりすると解約まで約2ヵ月かかり、それから新規の申込みになる。
ETCコーポレートカード協同組合の変更は、約3ヵ月、早くても2ヵ月はETCコーポレートカードが利用できない期間が発生する。
- ETCコーポレートカードの解約申請(組合の脱退)
- カード解約・組合脱退完了
- 別の組合でETCコーポレートカードの新規申込み
- カード利用開始
ETCコーポレートカードが利用できない期間は、クレジットカード会社が発行するETCカードなどで対応することになる。
事情を説明すれば「仮カード」を発行してくれる組合もあるので、移動先のETCコーポレートカード協同組合は厳選しよう。
「移動した先がもっとブラックでした」なんて結果になったら目も当てられない。別記事「ETCコーポレートカード比較・100法人が選ぶ協同組合」から条件ピッタリの組合を探そう。
変更先におすすめのETCコーポレートカード協同組合
おすすめのETCコーポレートカード協同組合は「テイ・ネット物流事業協同組合」だ。
組合の変更希望事業者に対して、割引率10%のETC仮カードを発行してくれる。明細書があればシミュレーションもしれくれるので、組合の変更を考えている事業者は相談してみると良い。
ネクスコの利用が月3万円という条件はあるが、保証金無し・割引率はネクスコと同じという実績がある。当ラボ一押しの組合だ。
ETCコーポレートカード組合の変更についてまとめ
ETCコーポレートカード協同組合の数は、全国に200~300あると言われている。多くの組合は正規の割引率で計算し、正しい明細書を作り、請求書を送ってくる。だが稀に割引率を誤魔化す悪質な組合も存在する。
「組合に騙されている?」と気付いたつもりでも単に利用方法に問題があったり、明細書の読み方が間違っているパターンもある。
冷静に判断してもらいたい。
入念に調べ、それでも組合が操作していると断定できたのであれば「組合と話し合い」か「組合の変更」の2択だ。
個人的には一度目は「話し合い」を。変更するなら準備を怠ってはならない。
ETCコーポレートカードが利用できない期間が2ヶ月で済めば御の字、できれば3カ月程度の空白期間で収めたいものだ。