ETCコーポレートカードは、高速道路株式会社(通称:ネクスコ)が発行しているETCカードの一つだ。
ネクスコはクレジット機能の付いていないETCパーソナルカードも発行しているが、大口・多頻度割引制度に対応しているのはETCコーポレートカードだけである。
大口・多頻度割引制度とは、高速料金が高額になるほど割引率が上がるシステムだ。ざっくり説明すると、高速料金が月3万円以上の利用分から最大で40%割引される。大変お得である。
しかし、大口・多頻度割引の計算は少々ややこしい点がある。現在利用しているETCカード明細から丸々40%割引されるわけではない。後に詳しく解説するが、40%割引とは諸条件をクリアした割引率の最大値だ。
そして、クレジットカード会社の発行する従来のETCカードと比べて制約が多く、何よりETCコーポレートカードの申込みには時間と手間がかかる。
今回の記事では「ETCコーポレートカードとは一体どんなサービスを提供しているのか?」「どんな人におすすめなのか?」などを、初心者にも分かりやすく解説しよう。概ね下記のような内容だ。
- 使うほど上がる割引率「大口・多頻度割引」
- 申し込みできる法人・個人・団体とは
- 4ヶ月分の保証金を無くす方法
- 申込みはちょっと手間がかかる
- ETCコーポレートカードはこんな人におすすめ
ETCコーポレートカードとは
ETCコーポレートカードとは、高速道路株式会社(ネクスコ)が発行・貸与する事業者向けのETCカードだ。ちなみに「コーポレート(法人)」という名称だが、個人名義で申込みすることも可能である。
カード本体の見た目は、普通のETCカードと違いはない。
特別な装置が必要というわけでもなく、現在利用しているETC車載器(ETCカードを挿す装置)をそのまま利用できる。ETC車載器を搭載していない車両は申込みできないので注意しよう。
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引制度を分かりやすく解説
ETCコーポレートカードの最大の特徴は「大口・多頻度割引制度」にある。
1ヵ月の高速料金が5,000円超えから割引が発生し、3万円超えの分は最大40%の割引になる。
この「最大40%の割引」は、ETC2.0車載器の車載器を搭載した事業用車両が対象だ。事業用車両とは、緑ナンバーを付けた車両のこと。
ETCコーポレートカードを申込む車のナンバーが白(軽自動車なら黄色)なら、割引率の最大値は30%となる。
高速料金(月) | 割引率 |
---|---|
5,000円未満 | 無し |
5,001円から10,000円の分 | 10%(20%) |
10,001円から30,000円の分 | 20%(30%) |
30,001円以上の分 | 30%(40%) |
上記の表は、ネクスコの高速道路を利用した時の割引だ(伊勢湾岸道の一部を除く)
大口・多頻度割引でよく勘違いされることだが、高速料金の「の分」が曲者。白ナンバーなら最大30%の割引率だが、正確に言うなら3万円を超えた分だけが30%割引される。
ETCコーポレートカードの大口・多頻度割引制度は割引計算が特殊なため、別の記事で詳しく解説している。(参照:ETCコーポレートカードの割引率で具体的に割引計算してみよう)
また、高速料金が月5,000以上から割引されるが、月13,800円に満たない人は注意が必要だ。ETCマイレージに登録した従来のETCカードの方がお得になるケースもある。(参照:ETCコーポレートカードとETCマイレージサービスの割引比較→どっちが得?)
休日割引・深夜割引・平日朝夕割引にも対応
ETCコーポレートカードは、大口・多頻度割引制度だけではない。他にも様々な割引サービスが付いている。
- 大口・多頻度割引
- 休日割引
- 深夜割引
- 平日朝夕割引(併用不可)
大口・多頻度割引と併用できるのは「休日割引」と「深夜割引」だ。休日や深夜に利用した割引後の金額に対して大口・多頻度割引が適用される。休日割引や深夜割引をうまく併用すれば、高速料金を更に安くできる。
「平日朝夕割引」は大口・多頻度割引と併用ができないが、最大50%の割引が受けられるサービスだ。ETCコーポレートカードは平日朝夕割引に対応している為、利用時間を調整すると良いだろう。
平日朝夕割引も複雑なシステムの為、別記事で解説している(参照:ETC平日朝夕割引(30%~50%)はETCコーポレートカードで利用可能)
ETCコーポレートカードは割引計算が複雑だが、一番安くなる割引を適用して請求書が届く。どこぞの携帯会社とは違う良心的なサービスと言って良いだろう。
ETCコーポレートカードのメリットとデメリット
ETCコーポレートカードのメリットは、豊富な割引サービスだ。大口・多頻度割引制度だけで最大40%の割引があり、休日割引や深夜割引と併用することで更なる割引が可能である。
デメリットは制約の多さだ。申込みが面倒だったり、カード発行時と年1で手数料が必要だったりもする。
大まかに箇条書きすると下記のようになる。
- 大口・多頻度割引
- 休日割引・深夜割引(併用可)
- 平日朝夕割引(併用不可)
- 別の車で使えない(車両1台につき1枚発行)
- 申込みに手間がかかる
- 1枚につき手数料がかかる
- 4ヶ月分の保証金が必要(※免除する方法あり)
ここでは、ETCコーポレートカードについて、メリットとデメリットに分けて詳しく解説しよう。
ETCコーポレートカードのメリット
ETCコーポレートカードのメリットは先に説明した割引サービス。それ以外にはない。
中には”ステータス”的な感じで所持している人もいるようだが、特殊な感性を除けば、ETCコーポレートカードのメリットは大幅な割引サービスだけである。
ETCコーポレートカードのデメリット
ETCコーポレートカードのデメリットは制約が多いこと。クレジットカード会社の発行する従来のETCカードと比べると、普段使いするには不便過ぎる点がデメリットの一つだ。
ETCコーポレートカードは別の車には使えない
ETCコーポレートカードは、車両1台に対して1枚のカードが発行される。基本的には、申込みした車両の専用カードという認識だ。別の車では使えない。
3台の車で使いたいのであれば、ETCコーポレートカードは3枚発行する必要がある。
仮に違う車で利用した場合、ETCゲートは開くが「車両不一致」として割引適用外となる。
車両不一致は明細書に載るのだが、使用を続けると「カードの悪用」と判断され、利用停止措置を取られる可能性がある。
リース車、レンタカー、カーシェア、車検時の代車などに注意しよう。
申込みに手間がかかる
ETCコーポレートカードの申込みには非常に手間がかかる。時間もかかる。
クレジットカード会社のETCカードはオプションで選択するだけだが、ETCコーポレートカードは必要書類が多く、発行まで1ヵ月ほどかかる。
ETCコーポレートカードの手数料
ETCコーポレートカードは手数料がある。
カード1枚に対して新規発行手数料が最初に629円。年に1度の取扱手数料が629円。紛失したり破損した時の再発行手数料が629円。
微々たる金額だが覚えておこう。
保証金は4ヶ月分
ETCコーポレートカードは後払いの為、申込みには保証金が必要だ。
利用案内(pdf注意)には「後納料金の支払見込月額の4倍に相当する額以上の額」とある。
高速料金の支払いが「平均して毎月5万円」であるならば、保証金は20万円。最低保証額は10万円なので、どんなに安く設定しても保証金が10万円より低くなることはない。
当たり前だが、高速道路の利用料は保証金とは別に毎月支払う。毎月請求書が届き、指定口座に振り込む。
万が一、利用料の支払いが滞った時に保証金から差し引かれる。この保証金はETCコーポレートカードを利用している限り、ネクスコに預けっ放しになるお金だ。
毎月3万円以上の高速利用がる法人なら、保証金無しでETCコーポレートカードを発行できる事業協同組合を利用する方法もある。(参照:おすすめETCコーポレートカード協同組合テイ・ネット)
ETCコーポレートカードの申込み方法
次に、ETCコーポレートカードの申込み方法を解説しよう。
最初に書いておくが、ETCコーポレートカードの手続きは、他のETCカードと比較しても手間と時間がかかる。
- ETCコーポレートカード利用申込書
- 車検証
- ETC車載器管理番号
- 商業登記簿謄本(個人は不要)
- 印鑑証明
これら全ての書類を提出してから審査に入る。
申込みが完了してカードが発行され実際に利用するまで1ヶ月ほど期間を要する。
車両と申込者の名義が同じであること
ETCコーポレートカードの注意点として、車両と申込者の名義が同じであることがあげられる。
法人名義でカードの申込みをするなら、車の名義も同じ法人名義でなければならない。
つまり「リース車」「カーシェア」などの車ではETCコーポレートカードの申込みはできない、ということになる。
※ローンで車を購入すると完済までディーラーやローン会社の名義になることがあるが、その場合は同一名義でなくてもETCコーポレートカードの申込みは可能だ。
申込みできない・審査に落ちるケース
全ての書類を不備なく提出してもETCコーポレートカードの審査に落ちるケースがある。
- 過去3年以内に高速道路で料金トラブルがある
- 高速道路で起こした損害(バーを折ったなど)を賠償していない
- 過去3年以内に何らかの理由でETCコーポレートカードを没収されている
- 法人の実態が確認できないペーパーカンパニー
- 保証金または保証人を用意できない
- ETC車載器がない
ETCコーポレートカードとは?のまとめ
ここまでETCコーポレートカードについて初心者向けに基本的な概要を解説した。最後にまとめてみよう。
ETCコーポレートカードとは高速道路株式会社が発行する公式のETCカードであり、一言でいうなら「高速道路のお得意様カード」だ。
申込みに手間と時間がかかり、利用するにも制限が多いが、毎月バカ高い高速代を支払う事業者に対する救済システムでもある。物流系の法人はETCコーポレートカードをほぼ導入している。
月々の高速代が安くてもETCコーポレートカードの申込みはできるが、毎月の高速料金が「13,800円以下」ならETCマイレージサービスの方が得に利用できる。
「13,800円以上」がボーダーラインだが、手続きの手間や利用時の制限を考えると気軽に申請できないのがETCコーポレートカードだ。今後の使用状況なども考慮すると良いだろう。
ETCコーポレートカードは組合が断然おすすめ
ネクスコが管轄する高速道路の利用額が毎月3万円(年36万円)以上の事業者なら、ETCコーポレートカードを扱う事業協同組合への加入をおすすめする。
保証金無しで申込みできる組合は限られているが、複雑な利用明細を整理したり、支払いを口座振替にしたり、様々な面倒事をサポートしている。
但し、どこの組合に所属するかはとても重要だ。首都高速で利用できなかったり、手数料を多く取られたり、正直なところ加入しない方が良い組合もある。
(参照:ETCコーポレートカード比較・100法人が選ぶ協同組合)
ETCコーポレートカードのよくある質問
最後にETCコーポレートカードについてよく聞かれる質問をFAQ方式で紹介しておこう。
ETCコーポレートカード発行するネクスコとは?
ETCコーポレートカードの発行・付与はネクスコが行っている。ネクスコとは高速道路株式会社3社の総称だ。
- NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)
- NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)
- NEXCO西日本(西日本高速道路株式会社)
ETCコーポレートカードの割引は、ネクスコが管理している高速道路は基本的に3万円以上30%(ETC2.0の事業車両は40%)の割引率になっている。
ネクスコ以外の高速道路、例えば首都高や阪神高速など都市型高速の割引率はネクスコより低い。
ETCコーポレートカードを申し込みをする前に、自分が利用する高速道路をチェックする必要がある。
バイクでも申込みできる?
ETCコーポレートカードはバイクでの利用も可能だ。
「申込者とバイクの名義が同じ」「ETC車載器を取り付けている」ことが条件である。もちろんETCコーポレートカード組合の加入も問題ない。
支払い方法を教えて
ネクスコで申込みをしたETCコーポレートカードの支払い方法は毎月銀行振り込みとなっている。
ETCコーポレートカード組合で申込みした場合は口座引き落が多い。組合によって銀行振り込みを指定することもある。
どちらで申し込みをしてもクレジットカードでの支払いはできない。
申込みをした車両は、別のETCカードを利用できる?
ETCコーポレートカードは別の車で使えないが、ETCコーポレートカードに登録した車は別のETCカードで使うことができる。
限度額はある?
後払いシステムのETCコーポレートカードは基本的に限度額はない。だが、保証金の追加はある。
積立金って何?
ETCコーポレートカードに積立金はない。
しかし、組合によっては、保証金を分割払い(積立式)にするケースがある。