ETCコーポレートカードの申込みには審査がある。審査内容は「過去にETCコーポレートカードで利用停止措置などのペナルティを受けていないか?」「高速道路で違反行為をしていないか?」程度の簡単なものだが、審査に落ちると当然のことながらETCコーポレートカードは発行されない。
審査は高速道路株式会社(ネクスコ)が行うため、違反履歴があれば即バレする。しかし、クレジット審査が無いため、「健全な運転を心掛けている業者」であればほぼ問題なく発行できるのがETCコーポレートカードだ。
もう一つ重要なポイントはETCコーポレートカード協同組合だ。ETC協同組合とも呼ばれる組織だが、組合で発行するETCコーポレートカードは、審査が少し厳しくなる。
審査が厳しくなる理由は、ネクスコの審査とは別に「組合の審査」が入るからだ。ETC協同組合のETCコーポレートカードは、保証金が不要になったり、面倒な車両管理も省けるなどメリットが多いので、可能であれば加入をおすすめする。
今回の記事は、ETCコーポレートカードの「ネクスコの審査」「ETC協同組合の審査」について解説する。
ETCコーポレートカードの申込み審査について
ETCコーポレートカードは大口・多頻度割引が付いたETCカードだ。最大で約40%の割引が適用される。高速道路株式会社(ネクスコ3社)が発行・管理をしているため割引率は随一だ。
恩恵が大きいETCコーポレートカードは、申込みに審査がある。審査は「過去に申込者が高速道路で悪さをしてないか?」といった程度のもので、日頃から交通ルールを守っている事業者であれば審査に落ちることはほぼない。
審査とは意味合いが少し異なるが、「申込者と車両の名義が違う」「4ヶ月分の保証金を用意できない」などの理由でETCコーポレートカードを断念する人もいるようだ。
保証金に関しては、ETC協同組合に加入することで免除することが可能だ。しかしETC協同組合もネクスコの審査がある。したがって、ネクスコの審査が落ちた人はETC協同組合でもETCコーポレートカードの発行はできない。
そしてETC協同組合にも独自の審査基準がある。加入条件とも言えるが、ネクスコとETC協同組合の審査基準を整理してみよう。
高速道路の違反行為者はETCコーポレートカードの審査に落ちる
ETCコーポレートカードの審査は厳しいものではないが、高速道路で違反行為した過去があると審査落ちする可能性が大きい。
違反行為といっても審査に関係する案件は多くない。「事故った上に賠償金を支払っていない」「車両制限を違反した過去がある」などといった限られた人が対象だ。
ETCバーやガードレールを破損し、高速道路からの賠償請求を無視している者は審査に落ちる。また、トラックなどの車両制限違反(過積載)は違反点数によって審査が通らない。
ETCコーポレートカードのペナルティを参考にすると審査内容は見えてくる。既にETCコーポレートカードを所持し罰則を受けている事業者は言うまでもなく審査は通らないだろう。
ETCコーポレートカード審査「ネクスコ」と「ETC協同組合」の違い
ETCコーポレートカードの審査はネクスコが行っている。ETC協同組合のコーポレートカードもネクスコが審査している。
ネクスコとETC協同組合のETCコーポレートカードは「個人の申込み」や「保証金」などについて違いがある。分かりやすく表にすると下記のようになる。
審査項目 | ネクスコ | ETC協同組合 |
---|---|---|
違反履歴あり | 不可 | 多少でも不可 |
車両の名義 | 契約者と同一 | 契約者と同一 |
個人 | 可能 | 不可 |
事業目的(業種) | 問わない | 制限あり |
住所 | 国内 | 制限あり |
保証金 | 4ヶ月分 | 無し |
最低利用額 | 無し | 月3万円以上 |
ETC協同組合のETCコーポレートカードはネクスコの劣化版のように思えるが、保証金を免除したり、明細書を見やすくカスタマイズするなどの付加サービスがある。なお、付加サービスは組合によって異なるため、加入するには比較検証する必要がある(参考:ETCコーポレートカード比較ランキング)
次に査定項目を詳しく解説しよう。
道路交通法・車両制限違反の履歴
ETCコーポレートカードの審査で最も重要になるのが「道路交通法違反」だ。特にトラックなどの過積載で違反点数が重なり、審査に落ちるケースは珍しくない。
違反点数は2年間蓄積される。具体的な点数がどの程度ネクスコの審査に関係するかは不明だが、ETC協同組合のETCコーポレートカードは、点数の多寡にかかわらず審査が通らない。
契約者と車両の名義が同一であること
ETCコーポレートカードは、契約者と車両の名義が同じでなければ審査が通らない。法人契約なら同じ法人名義の車両のみが対象だ。契約者が法人なのに車両が代表者名義だったり、リース車を使用している場合はETCコーポレートカードの発行はできない。
ローンを組んでいるため車両名義がローン会社のケースは例外的に発行を認めているが、ネクスコ窓口でもETC協同組合でも名義のルールは同じだ。
法人名義・個人名義での申込み
ETCコーポレートカードは法人専用と思われがちだが、実は個人でも申込みができる。個人名義で申込む場合は、ネクスコの窓口を利用すればOKだ。しかし保証金を納入する必要がある。
保証金を免除するETC協同組合は「事業協同組合」であるため、加入は法人か個人事業主に限られる。
事業目的による審査
ネクスコの窓口でETCコーポレートカードを申込むのであれば、契約者は法人だろうと個人だろうと問題は無い。そのため、事業目的も問わない。
しかしETC協同組合は違う。組合員は「認可を受けた行政庁」の管轄であるルールがあるため、組合と契約者の事業目的(業種)は適合しなければならない。
とはいえ、ETC協同組合は複数の認可を得ているケースが多く、仮に業種目的が合わなかった場合でも、別の組合なら加入できることも多い。
契約者の住所
ETCコーポレートカードは日本国内の事業者なら申込みができる。ネクスコで申込みをするなら、全国12カ所で対応しているので最寄りの窓口を利用すると良いだろう。
ETC協同組合は業種目的と同様に「認可を受けた行政庁」によって制限されている。全国区に対応した組合もあれば、地元の事業者だけにに絞った組合もある。
保証金は基本4ヶ月分
審査に問題がなくても、ETCコーポレートカードの発行は保証金が必要だ。保証金の金額は高速代の見込み4ヶ月分、もしくは最低額10万円となっている。
全てのETC協同組合ではないが、ETCコーポレートカードの保証金を免除している組合がある。初期費用を抑えたい法人は組合の利用をおすすめする。
毎月の最低利用額
ETCコーポレートカードは大口・多頻度(頻繁に高速道路を使う)業者に大幅な割引をする。しかし、多少ではあるが5,000円以上の利用から割引が適用される仕組みだ。
ネクスコで申込みした従来型のETCコーポレートカードは利用に制限はない。使い過ぎた場合は保証金の追加が必要になるが、高速道路を全く使わなくてもETCコーポレートカードを所持していることはできる。
しかし、ETC協同組合のETCコーポレートカードは「1枚につき月3万円以上の利用」が条件となっている。
組合によっては「年間36万円以上」であったり、多少融通が利くところもあるが、基本的に最低利用額(毎月3万円以上のノルマ)が設定されているのが一般的だ。
休日割引や深夜割引が適用された場合は、割引後の金額がノルマ額に加算される。しかし、「平日朝夕割引」を利用した分はノルマにカウントされない。利用額を計算する際には注意しよう。
ETCコーポレートカードの審査まとめ
ETCコーポレートカードの審査について、本家ネクスコの審査とETCコーポレートカード協同組合の違いを解説した。
ETC協同組合のETCコーポレートカードも最終的にはネクスコが審査をする。そのため、ネクスコの審査が落ちた場合は、ETC協同組合の審査も通らない。
とはいえ、正直なところETCコーポレートカードの審査は緩い。日頃から交通ルールを守っていれば審査に落ちることはないだろう。
しかし、ETC協同組合のETCコーポレートカードはややハードルが上がる。加入できるかは契約者次第だが、業種目的や法人の住所で加入できなかった場合は、別のETCコーポレートカード協同組合で加入できる可能性は大いにある。
最後に、ETCコーポレートカード協同組合へ加入できなかったケースと対処法を紹介しよう。
ETCコーポレートカードを別の窓口で発行済
既にETCコーポレートカードを所持している場合、追加のカードを他のETC協同組合で申請することはできない。
既にETCコーポレートカードを別の窓口で発行していると、ETC協同組合の審査に落ちる。
複数のETCコーポレートカードを発行することは可能だが、窓口は統一しなければならい。
仮に「A組合」のETCコーポレートカードを所持していた場合、
- 「B組合」に加入してカードを発行できない
- ネクスコの窓口でカードを発行できない
- A組合で追加カードの発行はできる
「A組合」に加入していたら、追加のカードは「A組合」のものに限定される。仮に「A組合」を変更したいのであれば、使用中のETCコーポレートカードを解約して「A組合」を脱退、その後、改めて他のETC協同組合に加入して新規申込み、という手順になる。